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『憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき』マシュー・ウィリアムズ


憎悪の科学ということで、憎悪が暴力などに変わっていくのはどういうメカニズムなのかといったことが書かれています。

偏見やヘイトクライム(憎悪犯罪)に興味がある方が読まれると、興味深く読むことができると思います。

『憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき』マシュー・ウィリアムズ

『憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき』マシュー・ウィリアムズ

『憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき』マシュー・ウィリアムズ

目次

プロローグ 憎悪とともに生きる
はじめに
第Ⅰ部 憎悪の基盤

第1章 憎むとはどういうことか
第2章 ヘイトクライムの発生件数
第3章 脳と憎悪
第4章 私の脳と憎悪
第5章 集団脅威と憎悪
第Ⅱ部 憎悪の促進剤
第6章 トラウマ、コンテインメント、憎悪
第7章 トリガーイベントと憎悪行為の増減
第8章 憎悪を生み出す過激派のカルチャー
第9章 ボットと荒らしの台頭
第10章 言葉と行動による憎悪行為
第11章 偏見が憎悪に変わるティッピングポイント

 

『憎悪の科学』ここに注目・言葉・名言

「脳をハッキングして憎悪を抱かせる

概して、人間は他の人間を傷つけるのが苦手だ。兵士や警察官を対象に人を殺す意欲について行なわれた研究は、殺人という行為が人間にとって容易なものではないことを示している。第二次世界大戦時の兵士の研究では、多くの兵士が標的を狙わず、かなりの数(約70%と言われている)が一発も発射しなかったことが判明している。正確な数字には異論があるものの、この分析結果を受けて、軍は、兵士が敵に対して”直感的に”憎悪を抱く傾向を強めるような心理的トレーニングを確立し、戦場で敵を殺すことが容易になるように図った。
 その結果、第二次世界大戦から20年経ったヴェトナム戦争では、90%以上の兵士が銃を発砲したという。心理的トレーニングでは、「没個性化」、「転嫁」、「非人間化」という心理的プロセスが大いに活用された。没個性化とは、自分を大きな集団の一部としてみなすことにより個人としての責任を免れさせる心理的プロセスで、戦争においては、敵を殺さないことは、自分だけでなく部隊も危険にさらすこととみなされる。責任を権威的な存在に転嫁するのは、スタンレー・ミルグラムが見出した「同調」という心理的プロセスで、上官が殺害を指示した場合、兵士は罪悪感から免れることができる。最後に、最も気がかりなのは、敵を人間以下の存在と見なす非人間化だ。敵は、ゴキブリ、害獣、寄 生虫のような存在とみなされ、その行動や信念は兵士のそれとは正反対のものとして位置づけられる。」(p.115)

憎悪しやすく

憎悪がどのように生まれやすくなるかは、本書でも書かれていますが、それが、容易に暴力に至るかというと、そういうわけでもなく。

殺人については、多くの人は、ためらうということです。

しかし、これも、心理的な介入で、変わってくるということです。

「没個性化」、「転嫁」、「非人間化」があるようですが、いずれにしても、人を殺すことに、何らかの理由を見つけて、「敵」だからということで、殺害に持っていくということのようです。

基本的に、そもそも人間は「親戚」なので、親戚同士で争うのは、馬鹿らしいと、私は思います。

しかし、そのようなことは言わず、「敵」だから、自分たちを守るために、排除しろということになるのでしょう。

「我ら」対「彼ら」

「憎悪は一時的な現象だ。私たちの「他者」に対する許容範囲は、日ごと、週ごと、月ごとに変化し、外的要因に左右されることが多い。憎しみに満ちた人でも、憎しみをそれほど強く感じない日もある。第1章で述べたように、年齢は、外集団に対する行動に影響を与えることがわかっている。若い頃には”群れたい”と思う傾向が強い。つまり、内集団に含まれたい、選ばれたい、評価されたいと思う傾向が強く、これが外集団に対するネガティブな感情となって表れることがある。思春期の脳はまだ成熟しておらず、実行制御を司る灰白質の領域(前頭前野)は依然として発達中であるため、「他者」から脅威として誤って受け取ったものを合理的に処理する能力が低い。
 本章で見てきたように、不寛容や憎しみを表現する機会に影響を与えるのが体内時計だけではないことは極めて明確だ。遠く離れた場所で起きた出来事も、私たちの行動を形成し、ヘイトクライムやヘイトスピーチを促進させる要因となる。社会の大多数の人にとって、トリガーイベントは自らの価値観や死の不可避性を考えさせ、「我ら」対「彼ら」への関心を鋭敏にする。」(p.254)

内と外

「仲間意識」が、自分たち以外を作ってしまうというのがあるのだと思います。

仲間の範囲が狭いのだと思います。

グローバル時代に、自国民のことしか考えられないとしたら、不十分なのではないでしょうか。

人類皆兄弟ではないですが、人類皆親類です。

内と外、敵と味方。

そのような見方をしている間は、憎悪が暴力につながる温床はなくならないのかもしれません。

思ったこと

憎しみや怒り、嫌悪などが、必ずしも、ヘイトスピーチやヘイトクライムにつながるわけではないと思います。

どういう状況などが、憎悪や嫌悪が、犯罪や暴力につながるのか。

その背景などは、本書を読むと、一部わかったように思います。

ただ、その重要な本質的な部分は、まだわかっていないのかもしれません。

さらなる研究を期待したいと思いました。

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『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』アダム・グラント

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www.biztikara.com

 

こちらの『THINK AGAIN』は、再考の価値について書かれています。
再考の方法などについて考えたい方が読まれると、参考になることが見つかると思います。

『憎悪の科学: 偏見が暴力に変わるとき』マシュー・ウィリアムズ

おすすめ度

★★★★☆

憎悪や偏見が暴力に変わるのは、どんなときなのかといったことが書かれています。
偏見などに興味がある方が読まれると、興味深く読むことができると思います。

おすすめしたい方

偏見などに興味がある方。
ビジネスパーソン。

今日の読書「ビジネス書をチカラに!」

脳をハッキングして憎悪を抱かせる

偏見や憎悪とどう向き合っていますか?