シンクロニシティは、日本語で言うと、共時性というところでしょうか。
違う場所で、同じようなことが起こることといった意味だと思います。
本書では、そのシンクロニシティについて、物理学的な観点などから書かれています。量子力学的な話です。
物理学の発展の歴史を辿りつつ、その内容を伝えている本です。
『シンクロニシティ 科学と非科学の間に』ポール・ハルパーン、権田敦司 (翻訳)
目次
自然界のつながりを描く
天空へ挑む―古代の人々が描いた天界像
木星からの光が遅れる
輝きの源を辿る―ニュートンとマクスウェルによる補完
障壁と抜け道―相対性理論と量子力学による革命
不確定という世界―現実主義からの脱却
対称性の力―因果律を超えて
シンクロニシティへの道―ユングとパウリの対話
ふぞろいの姿―異を映す鏡のなかへ
現実へ挑む―量子もつれと格闘し、量子跳躍をてなずけ、ワームホールに未来を見る
宇宙のもつれを繙く
『シンクロニシティ 科学と非科学の間に』のここに注目・言葉・名言
「光はもはや抽象的存在ーー豊かな愛情を表す象徴や、真理へと導く灯ーーではなくなったのである。なるほど、詩や哲学の世界では、天から注ぎ人々の心を満たすと描かれるかもしれない。しかし、そのような例えだけでは光の真の姿に迫ることはできないだろう。ガリレオやレーマー、ホイヘンスは光を科学的考察の対象として捉えたことで、偉大なる功績を我々に残したのだ。
そして科学はその後、理論と実験の双方においてさらなる進展を見せる――。
ニュートンが運動の法則を発見し、マクスウェルが電磁気学を確立し、フィゾーやフーコー、マイケルソン、モーリーなどが光速度測定装置を開発する。やがて光学の発展と相まって、光速をはじめとする光の様々な特性が詳らかにされ、人類は真の宇宙像へと近づいていくのだ。」(p.130)
光とは?
光とは何か?
今となっては、電磁波であったり、質量がないといったようなことがわかるわけですが、その昔は、それがなんであったかは、まだわかっていないことが多かったわけです。
それが、ニュートンやマクスウェル、アインシュタインなどによって、解明されていったということですよね。
量子コンピュータ
「量子ビットは、2つの状態が重なり合った量子情報の最小単位(電子や光子などの粒子が般に現す状態)である。観測されるまで2つの可能性―たとえばアップとダウンを内包する、重ね合わせの状態だ。そのため量子コンピュータは、複数系統の情報処理を一度に並列して行うことができる。量子コヒーレンス(268頁)を維持しながら計算を進め、操作に応じて量子状態を崩壊させ、特定の問題に対して答えを示すのである。
量子コンピュータは現在、暗号作成や暗号解読、予測、モデル化などを目的に商業ベースで 開発が進められている。カフェイン分子のモデル化であれば、160量子ビットの量子コンピュータが必要になる見通しだ。」
(p.416)
量子の原理を応用したコンピュータ
そして、現在、量子コンピュータの実用化が進められています。
これも、量子の原理を応用したコンピュータです。
量子が、2つの状態を合わせ持てることから、それを利用して、データを処理するという方法です。
こうやって、物理学での科学的知見が、技術となって活用されるようになっていく。
量子力学などは、量子の世界の話なので、なかなか想像しにくく、理解しにくいですが、「現実世界」でも活用されるということです。
思ったこと
「パウリの示したエネルギー(と運動量)と時空の組み合わせは、相対性理論におけるハイゼノベルクの不確定性原理に対応する。時空を特定すると、エネルギー・運動量テンソル(相対性理論における四次元量のような物理量)が特定できず、その逆も然り、との意味である。
彼の言うところの因果関係は「統計的な因果関係」を意味し、ユングもその解釈を採用したリ、決定論に基づく定義とは一線を画す。ある放射性崩壊について、特定時間内での発生が予 測できないように、量子力学では、個々の観測に応じて無秩序に結果を現す現象が存在する。その点を考慮すると、因果関係に確率や平均といった要素を盛り込む必要が生まれる。」(p.352)
因果、原因と結果というのは、科学というか、現実世界では当たり前のように思われます。
しかし、「量子の世界」では、可能性の一つというか、そういう見方もできるということになります。
このため、過去と現在、未来というものが、一方向のみに流れないという可能性もあるということに、なりえたりもします。
というのはあるのですが、これは極小の量子の世界なので、そのまま現実世界に当てはまるのかどうか。これは、今後の研究によってわかってくるのだろうと思います。
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こちらの『因果推論の科学』は、因果推論ということで、原因と結果を考える科学ということです。
原因を見つけるための科学を知りたい方が読まれると、参考になることが見つかると思います。
『シンクロニシティ 科学と非科学の間に』ポール・ハルパーン、権田敦司 (翻訳)
おすすめ度
★★★★☆
シンクロニシティというよりも、物理学、量子力学について書かれています。
これまでの物理学の進展などを、歴史的に知ることができます。物理学、量子力学に興味がある方が読まれると、興味深く読むことができると思います。
おすすめしたい方
物理学などに興味がある方。
ビジネスパーソン。
今日の読書「ビジネス書をチカラに!」
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