希望の歴史、人類が善き未来をつくるための18章ということで、人間の善性について書かれています。
性善説か性悪説かという話がありますが、本書では、人間の善性について書かれています。
『Humankind 希望の歴史 上下』ルトガー・ブレグマン
『Humankind 希望の歴史』のここに注目・言葉・名言
「本書では、ある過激な考えを述べよう。
その考えは長く支配者を悩ませ、宗教やイデオロギーによって否定され、メディアには無視され、世界史の記録からは消されてきた。
しかし、同時にそれは事実上すべての科学分野で承認され、進化によって裏づけられ、 日々の生活で確認されている。もっとも、それは人間の本質に関わることなので、気づかれないまま見過ごされてきた。
わたしたちに、この考えをもっと真剣に受け止める勇気さえあれば、それは革命を起こすだろう。社会はひっくり返るはずだ。なぜなら、あなたがひとたびその本当の意味を理解したら、この世界を見る目がすっかり変わるからだ。
では、この過激な考えとは、どんな考えだろう。
それは、「ほとんどの人は本質的にかなり善良だ」というものだ。」
(上巻・p.21)
ほとんどの人は、本質的にかなり善良だ
性悪説か性善説かと言われると、人は悪いことをするからということで、性悪説を言いたくなります。
ただ、たいていの人、たいていの場面では、人は善良だということです。
良いことをしようと考えている人が多いでしょうし、少なくとも悪いことはしたくないと考えている人が多いですよね。
とはいえ、それは状況に左右されたり、人によるというのもありますね。
オキシトシン
「オキシトシンは、「愛情ホルモン」とか「優しさのミルク」と呼ばれ、もてはやされてきた。
しかし、その後、別の重大なニュースが届いた。2010年にアムステルダム大学の研究者たちが、オキシトシンの影響はグループ内に限られるらしいことを発見したのである。このホルモンは友人に対する愛情を高めるだけでなく、見知らぬ人に対する嫌悪を強める。つまりオキシトシンは、普遍的な友情の燃料ではなく、身内びいきの源だったのだ。」
(上巻・p.106)
オキシトシンは、普遍的な友情の燃料ではなく、身内びいきの源
身内や友人、知っている人には優しいが、知らない人、敵とみなした人に冷たくなる。
そういうところが人間にはあったりすると思います。
それは、オキシトシンの影響もあるのかもしれません。
ミルグラムの実験に対抗できた人
「徹底的な分析をした結果、あるパターンが見つかった。実験を止めることができた被験者は、三つの戦略を用いていた。
・生徒役に話しかける。
・実験助手に責任を思い出させる。
:続けることを繰り返し拒む。
コミュニケーション、対決、共感、抵抗。 事実上すべての被験者が、これらの戦略を用いていた。結局のところ被験者は皆、実験の中止を望んでいたのだ。 やめることができた人々は、そうした戦略を使う回数がはるかに多かった。幸い、それはトレーニングが可能なスキルだ抵抗するには練習するしかない。」(上巻・p.223)
ミルグラムの実験
ミルグラムの実験というものがあります。
権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものとされていますが、
その実験を止めることができた人は、上のようなことをしていたということです。
これらを使って、抵抗するということですね。
共感は?
「長い間わたしは、他人の苦しみを感じるこの素晴らしい本能は、人々をより親しくさせると考えていた。この世界が必要としているのは、より多くの共感だ、と思っていた。しかし、そんな折に、赤ん坊を研究する心理学者、ポール・ブルームが書いた新刊を読んだ。人々がブルームに、著書のテーマを尋ねると、ブルームは次のように言うだろう。
「共感についての本だ」
人々は微笑み、うなずくが、それはブルームの次の言葉を聞くまでだ。
「わたしは共感を良いこととは思わない」
ブルームは冗談を言っているのではない。彼によると、共感は、世界を照らす情け深い太陽ではない。 それはスポットライトだ。サーチライトなのだ。 共感は、あなたの人生に関わりのある特定の人や集団だけに光をあてる。そして、あなたは、その光に照らされた人や集団の感情を吸いとるのに忙しくなり、世界の他の部分が見えなくなる。」(下巻・p.32)
共感で、世界の他の部分が見えなくなる
共感が大切ということは、結構言われるかもしれません。
そこにはメリットもあるでしょう。
しかし、デメリットとしては、知らない人や興味のない人には、無関心になるということです。
また、共感は、寛大さを失うことにもなると、本書ではしています。
共感力は大切かもしれませんが、共感できない人に対して不寛容になるということは、知っておきたいことですね。
マネジメントをしないマネジャー
「再びヨス・デ・ブロークに目を向けよう。2006年の初めまで、彼はオランダの大規模なヘルスケアの役員だった。そこでは「自律チーム」と「不干渉マネジメント」のためのアイデアを次から次へと提案し、ついには員たちを激怒させた。
デ・ブローク自身はビジネスの経験も学位もなかった。
数年間、大学で経済学を学んだが、 中退して看護師になったのだ。
「ヘルスケアであれ、教育であれ、他の何であれ、トップにいる人と現場で働く人との間には、大きなギャップがある」、アルメロにあるオフィスを訪ねた時、彼はそう語った。「マネジャーたちは結束しがちだ。さまざまな講座や会議をセッティングし、しょっちゅう集まっては、自分たちのやり方が正しいことを確認しようとする」
そのせいで彼らは現実から切り離される。 「現場で働く人は戦略的に考えることができ ない、つまり、ビジョンに欠ける、とマネージャーたちは考えている」とデ・ブロークは続ける。
「だが、本当は、現場の人たちはアイデアに溢れている。 彼らは千のアイデアを思いつくが、マネージャーは耳を貸さない。 なぜならマネージャーは、会社の保養所に行って、働きバチの ためのプランをひねり出すのが自分たちの役目だと、考えているからだ」
デ・ブロークはそうではない。 彼は自分が雇っている人々を、仕事をどう行うべきかを熟知している専門家にして、内発的に動機づけられたプロフェッショナル、と見なしている。 「わたしの経験から言うと、マネージャーはほとんどアイデアを
持っていない。彼らがマネジャーになれたのは、会社のシステムに
適合し、秩序に従ったからだ。先見の明があったからではない。それなのに彼らは、『パフォーマンスの高いリーダーシップ』 講座のようなものを受講して、自分たちは形勢を一変させるゲームチェンジャーで、 革新者だと思い込んでいる」」
(下巻・p.95)
マネジメントよりも
マネジメントよりも、内発的に動機づけられたプロフェッショナルが働きやすくすること。
こちらのほうがうまくいくということです。
やる気のない人はやる気にさせるというよりは、やる気がある人が、やりやすいようにする、行動しやすくする、邪魔をしない。
そういった「マネジメント」が必要なのでしょうね。
『Humankind 希望の歴史』で取り入れたいと思ったこと
「楽観主義でも悲観主義でもない、可能主義」(下巻・p.142)
善性を社会で実現していくことはできる、可能だと考える。
楽観も悲観でもなく、可能主義だということです。
私も、可能だとは思います。
ただ、本書は、少し楽観主義すぎる感じもします。
もう少し言うと、仕組みが必要だと感じます。
もっと、簡単に、良いことができる仕組み。
そういうものがあったら、人間の善性を、現実の世界で
実現できるようにしやすくなりますよね。
そんな仕組みが欲しいですね。
『Humankind 希望の歴史』とあわせて読みたい
『サピエンス全史(上)(下)文明の構造と人類の幸福』
人類の歴史から、どのような方向に進んでいるのか、文明と幸福の関係は
どうなのか。
こういったことがわかります。
ホモ・サピエンスの歴史を概観したい方は読んでみてください。
人類や歴史の方向性などがわかるはずです。
『Humankind 希望の歴史 上下』ルトガー・ブレグマン
おすすめ度
★★★★☆(★4.5)
性善説、性悪説、人間の本質はどちらなのか。そんな疑問がありますよね。
本書では、そんな疑問について、性善だということが書かれています。
人類のこれからを考えたい方が読まれると、参考になることが見つかると思います。
おすすめしたい方
人類の今までとこれからを考えたい方。
ビジネスパーソン。
今日の読書「ビジネス書をチカラに!」
共感で、世界の他の部分が見えなくなる
共感できない人に対して、不寛容になっていませんか?